4期カレッジ隊活動レポート
2010年3月13日(土)
スケジュール6:00 朝食 【写真】 |
報告者より
今日はいよいよアンコールワット見学です。非合法政権が続き、悲しい歴史の中にあっても、常に国旗にデザインしてきた、カンボジア国民にとって特別な意味を持つアンコールワット。彼らはこのすばらしい世界遺産を作った人々の子孫であるということに誇りを抱き、国民の血となり骨となっていると今川先生からの講義を受け、観光ではなく畏敬の念を持って参拝しました。本日はアンコールワット以外にもたくさんの場所を見学しましたので、箇条書きで報告させていただきます。
(水上生活)すっかり観光地化している様子に驚き、正直少々辟易する部分もありました。しかし、観光ボートの舵取りや、飲み物等を売りさばく子どもたちに生きる力強さを感じ、児童労働とただ批判するのではなく、彼らが家計を支えている事実を受け止め、仕事をしながら学べる環境を整える支援について考えるべきだという今川先生の言葉が心に残りました。
(アンコールワット)西門から第一回廊、第二回廊、中央祠堂と廻り東門へ。駆け足でしたが、細かな彫刻、神々への畏敬、表情の美しさ。カンボジアの方々の誇りを十分に感じることができました。中央祠堂では、私でも神々と対話ができそうな絶景と大気に包まれ、感動しました。回廊の壁面の彫刻は12世紀には金箔、16世紀には朱色であったとの事。当時の美しさを是非とも見たかったと思いつつ、想像の翼をはためかせ、カンボジアの最盛期を思い浮かべました。
(上智大学人材養成センター・シハヌーク美術館)人材養成、発掘調査、アンコールワットの西参道修復プロジェクトに取り組む活動を三輪悟所長に伺いました。関わっている村人たちの生活の中で作業をするということ、カンボジアの人々が発掘し、経験を重ねていく支援をすることが大事だという言葉が印象に残りました。
シハヌーク美術館では、バンテアイ・クデイで発掘されたたくさんの仏像について、上智大学研究員の阿部千依さんに、当時の人々の心(王が変わる事で廃仏毀釈を余儀なくされたが丁寧に埋葬されていたという事)、仏像の見分け方(バイヨン様式・・・穏やかな顔。アンコールワット様式・・・精悍な顔)等を教えていただきました。説明がとてもわかりやすく、何よりも語り口から発掘の喜び、先人たちへの思いが伝わりました。
(プノンバケン、今川先生講義)プノンバケンの山頂で今川先生の講義を聞き、同じように夕日を見に訪れた、いろんな国の人々と共に、沈む夕日を見ました。王は神と対話できる唯一の存在であるがゆえに山に寺院を建立したとの事。自然豊かな景色の中に沈み行く夕日を見て、きっと1000年前の王様も同じように夕日を見ていたのだと思うと目頭が熱くなりました。(鳥居由美子)
車両長より
今日は初めてカンボジアの水上生活を見学に行きました。トンレサップ湖の水上船の乗合場までの道の両側に林立していた高床式住宅は、雨季には一面水に覆われるとのことで、雨季の風景も見てみたいと思いました。トンレサップ湖の水上船は韓国企業が出資しており、そのため地元の人々が観光客のために運営していた小さな水上船も禁止されてしまったとのこと。また水は、生活排水で水質悪化が進み、魚もベトナム人等の乱獲で減っているとのことです。あまりにも非衛生的な生活を強いられている水上生活者に対して、カンボジア政府はもう少し対策を講じるべきだととてももどかしく感じました。(関充子)
レポート係より
トンレサップ湖の水上生活者は、少なくとも1950年代以降に誕生したそうです。それまで、カンボジア人はあくまで農耕民族であり、魚を獲って生計を立てることや水上で生活することはありませんでしたが、ベトナム系の人々の影響を大きく受けて、水上生活が始まったようです。仏教的な価値観もあり、水上生活者は現在でも多くのカンボジア人から被差別的な扱いを受けてしまうという事実もあるそうです。
アンコールワットはジャングルの中に埋もれていた数世紀を経て19世紀に発見されますが、最盛期のアンコール朝の繁栄をしのばせつつも、当たり前ですが、そこにもう当時の人々はいません。昨日今日とアンコール遺跡群を見学していると、人類の栄枯盛衰の歴史を感じずにいられませんでした。そして、プノンバケンから見えるカンボジアの大地と夕日を眺め、長い人類の歴史とこの土地に生きてきた人々の姿に思いを馳せました。(加藤伸治)