衛生教育
JHPが建設した学校で、校内美化や清掃、トイレ利用、手洗いなどの衛生指導が行われるよう、またJHP建設校以外でも、カンボジアで衛生指導が広まり、教師や子どもたちの衛生への関心と意識が向上するよう、JHPでは衛生教育の普及に努めています。
カンボジアにおける衛生教育の現状
子どもたちの学びを支えるために、衛生環境の整備は欠かせません。
JHPは学校建設の調査時にトイレや井戸のニーズを必ず確認し、衛生環境の整備を進めています。
しかし、地域によって格差があるので、田舎の学校には完備されていない所が多く見られます。
トイレがある学校でも、部屋数が圧倒的に少なく、小学校と中学校が同じ校庭にある学校では、生徒と先生併せて450人ほどいますが、トイレは2棟7室しかありません。
また、都会でも生徒数に対してトイレの個室が少なく不便な学校があります。
衛生環境の整備
JHPが建設するトイレは、地雷や病気でハンディキャップを持つ子どもに配慮してスロープや手すりをつけたJHPオリジナルのバリアフリー設計になっています。
中には個室に車椅子で入れる広さになっているものもあります。
近年は他の支援団体も取り入れるようになったため、子どもたちが使いやすいトイレが各地で普及しています。
井戸は地域によって掘る深さや作り方が変ります。また出てきた水に大腸菌や砒素が含まれていないか、検査紙を使い確認しています。
さらに、研究機関で水質検査を行い、大腸菌や砒素などの有無を学校に報告しています。
JHPの学校建設は井戸、トイレの整備まで含まれます。
私たちは、過去30年間にトイレ302棟(1,187室)、井戸・給水タンク(約152基)などを支援しました。
衛生教本の配布
トイレや井戸を作っただけでは衛生教育は普及しません。そこで、JHPは1999年に「衛生教本」を作成し、建設した学校を中心にこれまで1万冊配布しています。
この教本は、ある男の子が朝起きてから学校生活まで衛生に配慮するポイントを、低学年の子どもでも分かるような文章とイラストで説明しています。
最近では、ゴミ箱を設置し、掃除を徹底している学校が増えています。
また、2015年-2016年には外務省の助成を受け、「学校環境改善のための校舎・衛生施設建設及び衛生教育支援事業」を進めました。この事業においても、プレイベン州コンポントラバイ郡内57校の小学校と郡教育局に「衛生的な学校を維持するためのガイドライン」を配布しています。
衛生授業の実施
2008年度に実施した既卒者対象絵画ワークショップ内で、絵画プロジェクト参加校の校長と絵画教員を対象に、衛生教育ワークショップを実施しました。
指導内容は、JHP衛生教本の解説、手洗い指導と手のデッサン、掃除当番作成等、衛生教育と美術教育を融合させたワークショップを企画しました。
また、外務省の助成による「衛生施設建設及び衛生教育支援事業」においても、プレイベン州コンポントラバイ郡の3校をモデルとして衛生ワークショップ、評価専門家による事業評価を進めました。
学校での自主的な衛生環境整備に向けた取り組み(2013年度~)
これまで、トイレや井戸支援に関しては、衛生教本を配布していますが、教師の知識が不十分なこともあり衛生指導が行われず、施設の維持管理が不徹底であることが課題となっていました。
そこで、2013年度は、国際ボランティア貯金の配分事業として衛生教育強化に取り組み、同分野の専門家を招き、プレイベン州、カンダール州の対象校8校にて衛生施設の建設とワークショップを実施しました。この結果、8校においてトイレ利用率の上昇、ゴミ箱の設置、教室やトイレの清掃に必要な備品の設置や石鹸の配置など多くの環境改善が見られました。
JHPは、カンボジアの学校に生徒会組織があることに着目し、専門家のトレーニングを受けた当会スタッフが生徒会中心メンバーに対して、衛生環境向上に必要な事項を論理的に指導してきました。また、生徒が他の生徒にも教えられるようになるためのトレーニングを含めたことで、8校の生徒が衛生的な生活環境の重要性を理解できるような体制が構築されました。
ここでは、2013年度の活動を事例に、時系列でご紹介いたします。
建設前ワークショップ(2013年5月9、10日)
建設支援を行う5校にて、教員及び生徒、学校支援委員会メンバー、村民、州と郡の教育局スタッフを集めて実施。その際、各学校に衛生教本を配布しました。
受益者の感想
(プレイトンボン中学校3年女子)
(プレイトンボン中学校村民、77歳男性)
トイレ、給水施設の建設(2013年5~9月)
対象校8校のうち5校に、トイレ(6棟30室)・給水施設(5基)を建設しました。
ワークショップ前調査(2013年9月)
専門家によるワークショップ実施の前提となる情報を得るために、対象校8校でアンケートを実施しました。
第1回目トレーニング(2013年10月7日~16日)
JHPローカルスタッフ4名が衛生専門家の指導を受けて理解を深め、TOT(Training of Trainers:指導者研修)という手法を用いて指導ができるようになりました。
第1回ワークショップ(2013年10月)
ローカルスタッフが中心となり、生徒代表と教員へのワークショップを実施しました。参加者は、衛生教育およびトイレ利用についての重要性を理解し、校舎およびトイレ清掃を含めた管理体制を自ら構築しました。
中間モニタリング(2013年12月~2014年1月)
トイレ建設支援を行った5校を対象にモニタリングとインタビューを実施しました。
第2回トレーニング(2014年1月27日~2月5日)
以下の点に重点を置き、工藤専門家のトレーニング、ワークショップ開催準備が行われました。
- モニタリング方法についての再検討
- 生徒から他の生徒へのトレーニング方法の確立
- 学校内で広げるためのツールづくり
第2回ワークショップ、学校観察(2014年2~3月)
学校内で、生徒が中心となり衛生環境の維持管理ができるようになるための指導方法、テクニックを紹介。グループワークでは、清掃基準づくりが行われました。
受益者の感想
(スレイモンコル中学校校長)
(コンポントラバイ郡教育局副局長)
(プロティエット中学校校長)
※ローカルライフスキル(LLS:Local Life Skill)
大体毎週木曜日に実施されている授業。内容は多岐にわたり、農業や芸術、交通安全や衛生教育等。学校により選択する内容が異なる授業時間であり、時間も異なります。
「学校環境改善のための校舎・衛生施設建設及び衛生教育支援事業」(2015年3月~2016年3月)
外務省「日本NGO連携無償資金協力事業」の助成により、「学校環境改善のための校舎・衛生施設建設及び衛生教育支援事業」を実施しました。2015年9月までにプレイベン州コンポントラバイ郡の対象校3校の校舎、トイレ、給水施設を完成、贈呈。また、工藤専門家による2回のワークショップ(2015年9月10~24日、2016年1月3~17日)や各学校の生徒を対象にした衛生ワークショップ、評価専門家による事業評価を目的とした最終調査を実施するなど、衛生教育支援活動に努め、2016年3月15日までに全ての事業を完了させました。
成果として、「対象校3校における2015年11月からの3ヶ月の出席率が90%以上になった」、「衛生ワークショップ後に各校で生徒が清掃目標やスケジュールを設定、実行されるようになった」、評価時のグループディスカッション時に「トイレの利用状況も60人中57人(95%、女子は100%)に上昇した」などが挙げられました。