初等科芸術教育支援事業(2016-2021)
JICA草の根技術協力事業に採択されたこの事業では、JHPがイニシアティブをとり、カンボジア教育省・JICAと三者協同で、芸術教育が量・質ともに不足しているカンボジアの小学校において、5年間に渡る芸術教育を充実させるための教材開発・人材育成に取り組みました。
芸術教科(音楽/美術)のシラバスや教科書/指導書の開発・教員育成を通して、
パイロット事業を行ったタケオ州では、4校の教員合計24名が芸術教科を教えることができるようになり、1,000人以上の生徒達が芸術教育を受けることができるようになりました。
この事業では、カンボジア王国の教育省、特に6名の担当職員と協力し、次の4つの活動を行いました。
2. 小学校の芸術教科のシラバス(学習目標や指導内容、計画を詳細に規定したもの)、生徒用の教科書、教員用の指導書を作成する。
3. 州レベルのトレーナー(教員を指導する人)を育成するための教育省内のトレーナーを育成する。
4. 州レベルのトレーナーを育成するための研修プログラムを作成する。
5年間の活動内容
[1] 2017年1月~2017年3月
音楽・美術教育専門家のカンボジア派遣
目的
◆音楽教育・美術教育の重要性について、
カンボジア教育省の職員に認識いただく。
◆カンボジアにおける音楽教育現場・美術教育現場を視察し、
現状を把握する。
◆シラバス(学習目標や指導内容、計画を詳細に規定化したもの)について
お互いに確認し合う。
1)音楽教育専門家訪問(1月30日~2月3日)
◇ 参加された専門家:
・田中健次氏(茨城大学・教育学部教授 音楽教育・教師教育)(写真左)
・井上和夫氏(タイ王国・セントラルマーケティンググループ Music Director)
(写真右)
◇ 主な訪問先と具体的内容
・プノンペン市教員養成学校:音楽授業見学と意見交換
・教育省(プノンペン):
音楽教育に関するレクチャー、シラバス・ワークショップ(写真左)
・プレイベン州の小学校2校:音楽授業視察(写真中)
・プノンペン王立芸術専門学校音楽科:見学と意見交換(写真右)
・プノンペン芸術大学:見学と意見交換
2)美術教育専門家訪問(3月12日~18日)
◇ 参加された専門家
・辻政博氏(帝京大学・教育学部初等教育学科 准教授)(写真左)
・藤江充氏(愛知教育大学 名誉教授)(写真右)
◇ 主な訪問先と具体的内容
・プノンペン市教員養成学校:美術授業の見学と意見交換
・教育省(プノンペン):
・美術教育に関するレクチャー、シラバス・ワークショップ(写真3点)
・スヴァイリエン州の小学校2校:美術授業視察
・王立芸術専門学校美術科(プノンペン):見学と意見交換
・国立博物館(プノンペン):鑑賞教材の視察
[2] 2017年6月
カンボジア教育省、芸術文化省職員のための本邦研修実施
研修の目的
・研修を通じて、日本の教育行政や教科書作成方法、国公立小・中学校の音楽、図画工作・美術の授業の組み立て方などについて学ぶ。
・カンボジアの公立小学校のための質の高い芸術教科(美術・音楽)カリキュラムの開発、効果的に普及できる人材を教育省内に育成する。
・芸術教科をはじめとする、今後のカンボジアの教育の質の向上に活かす。
カンボジアから研修生が来日(6月5日~11日)
◇ 研修参加者
・カンボジア教育省 職員10人
・カンボジア芸術文化省 職員2人
◇ 研修の内容:以下の4点
1)国公立小・中学校の音楽、図画工作、美術授業見学(6月6日~7日)
以下3校の学校へ訪問、見学を行いました。
・東京学芸大学附属竹早小・中学校(6月6日)
・目黒区立五本木小学校(6月7日)
・つくば市立光輝学園葛城小学校(6月7日)
写真左:美術の授業見学の様子(竹早中学校にて)
写真中:図画工作の授業見学の様子(五本木小学校にて)
写真右:音楽の授業見学の様子(葛城小学校にて)
2)教科書出版会社訪問(6月8日)
教科書出版会社を訪問し、音楽、図画工作・美術の教科書作成手法を学習。
編集者との意見交換会を行いました。
3)JHP会員との交流会(6月9日)
専門家の先生や、楽器清掃メンバーを中心とするJHPボランティアのみなさん、
そして東京事務所のスタッフとの交流会を行い、親睦を深めました。
4)芸術施設見学
期間中、日本の芸術施設や文化活動を体感してもらうため、コンサートや博物館の
見学を行いました。
・「西村智美 アジアを紡ぐコンサート」鑑賞
(6月6日・東京文化村オーチャードホール)
・東京国立博物館、下町民族資料館見学(6月10日・上野)
写真左:東京国立博物館にて
写真右:下町民族資料館にて
[3] 2017年7月以降~2018年3月
初等科の教科書と指導書のベースとなる指導案の作成
カンボジアにおいて日本人専門家による教科書作成のためのワークショップを開催し、カンボジアのワーキンググループのメンバーとともに、初等科の教科書と指導書のベースとなる指導案の作成に取りかかりました。
1)分科会の開催
日本、カンボジアの両国において、アドバイザーやワーキンググループのメンバーとともに、各科目のカリキュラム作成、改訂を進めるための会議を行いました。
◇ 日本での美術分科会:
①2017年7月16、17日 ②2018年1月14日
◇ カンボジアでの音楽分科会:
①2017年11月8、22日 ②2018年1月5、25日
2)日本人専門家派遣(3回)
教科書・指導書の作成にあたり必要となる知識・能力のインプット、教科書内の題材やコンテンツについての協議、開発ならびに実践などを行いました。
(1)音楽科目の教科書内コンテンツ(クメールリズムを使用した音楽ゲーム)の
検討・実践のためのワークショップおよび会議の開催
◇ 専門家:山田俊之氏(九州大学教育学部非常勤講師/九州女子短期大学特任教授)
◇ 開催日:2017年8月3日~9日
写真左:山田先生の音楽ゲーム
写真右:大喜びの子どもたち
(2)美術教科におけるスコープとシークエンスの体験と
その理解のためのワークショップ、シラバス・教科書の鑑賞題材に関する協議の開催
◇ 専門家:藤江充氏(愛知教育大学名誉教授)
◇ 開催日:2017年11月12日~18日
写真左:藤江先生のワークショップ
写真右:描いた口が開閉する「顔パク」を体験
(3)体験を通して、美術教科の教科書および指導書作成への理解を深めるための
ワークショップの開催
◇ 専門家:辻政博氏(帝京大学教育学部准教授)
◇ 開催日:2018年2月24日~3月4日
写真左:辻先生のワークショップ
写真右:身体全体を使って地面に思い思いの絵を描きました!
[4] 2018年4月以降~2018年12月
◇ 美術科目:
2018年7月より、教科書(児童が使用するもの)と指導書(教諭が使用するもの)の作成を教育省ワーキンググループのメンバーを中心に開始しました。
美術教科書のドラフト原稿
◇ 音楽科目:
教科書作成のためのクメール曲、歌詞等の素材の収集を継続するとともに、
初等科6年間を通しての具体的な学習活動と指導計画について、カンボジア人音楽専門家と協議しました。
1)美術分科会の開催
美術科目教科書・指導書作成を始めるにあたり、授業実践用の指導案の作成に関する協議を行うため、東京事務所とプノンペン事務所間をインターネット網でつなぎ美術分科会議を実施しました。
◇ 開催日:2018年6月10日
◇ 参加者:美術科目アドバイザー、JHPプノンペン事務所スタッフ
2)日本人専門家派遣
美術科目の教科書・指導書作成のプロセスを通して、授業体験を重ねてきたメンバーの次のステップとして、専門家をカンボジアへ派遣し指導案及び作成プロセスについて理解を深めるためのワークショップを実施しました。
◇ 開催日:2018年9月24日~28日
◇ 専門家:アドバイザーグループメンバー 岡田京子氏
国立教育政策研究所教育課程研究センター 研究開発部教育課程調査官
岡田先生によるワークショップ
[5] 2018年12月以降~2019年5月
日本、カンボジアの両国において、アドバイザーやワーキンググループのメンバーとともに、各科目の教科書、指導書を作成するための会議や授業実践、作業を行いました。
1)芸術科目分科会の開催
◇ 美術科目:日本での分科会1回、授業実践・作業
◇ 音楽科目:カンボジアでの分科会2回、作成作業
2)日本人専門家派遣
日本からカンボジアに芸術科目の専門家を派遣して、
ワーキンググループメンバーや関係者を対象に様々なワークショップを行いました。
(1)ワークショップ名:
音楽授業の体験および授業デザインへの理解を深めるためのワークショップ
◇ 専門家:津田正之先生(国立音楽大学教授)
◇ 開催日:2019年1月10日~13日
◇ 目的:
ひとつの曲題材を使って、学習を深めるための様々な活動が含まれた授業を体験することで、音楽科目の授業デザインの理解を深める。
津田先生の指導のもと行われた、音楽授業体験の様子
(2)ワークショップ名:
トレーナー育成研修プログラム内容の理解を深め、検討するためのワークショップ
◇ 専門家:藤江充先生(愛知教育大学名誉教授)
◇ 開催日:2019年5月21日~24日
◇ 目的:
2019年度後半に実施する「ナショナルトレーナー育成」に必要とされる、一般的な内容を理解するとともに、カンボジアの美術教育において特に大切だと考えられる事項についての検討、協議。
藤江先生によるワークショップの様子
3)中間報告会の実施
事業開始から2年半が経ち、5ヵ年事業の折り返し地点を迎えたことを踏まえて、
ワーキンググループメンバーによる教育省の関係局及び総局への中間報告会を開催しました。
これまでの活動のまとめ、教科書・指導書づくりの進捗、課題、今後のスケジュールなどがメンバーより報告され、
各局上長からは目に見える成果への驚きと、3者(教育省ワーキンググループ・JHP・JICA)が協力しての精力的な取り組みに感謝の言葉が述べられました。
中間報告会の様子
[6] 2019年6月以降~2019年10月
小学校の芸術教科の教科書と指導書の継続的作成とパイロット事業実施準備
パイロット事業では、初等科芸術教科の研修を実施することのできる「ナショナルトレーナー候補」を育成したり、作成した教科書と指導書を実際に使用して、現地の先生方に学校でのトライアル授業を行ってもらうことになります。
1)芸術科目分科会の開催
◇ 美術科目:日本での分科会1回、授業実践・作業
◇ 音楽科目:カンボジアでの分科会2回、作成作業
2)日本人専門家派遣
日本からカンボジアに芸術科目の専門家を派遣して、
ワーキンググループメンバーや関係者を対象に様々なワークショップを行いました。
(1)ワークショップ名:
美術科目の高学年指導、及び指導案作成への理解を深めるためのワークショップ
◇ 専門家:水島尚喜先生(聖心女子大学教授)
◇ 開催日:2019年7月11日~14日
◇ 目的:
美術科目の高学年指導に必要とされる内容、考え方、指導方法等を学ぶとともに、
授業実践を通して理解を深める。
ワークショップでの実践授業の様子
(2)ワークショップ名:
音楽科目のトレーナー育成研修プログラム内容へ理解を深め、検討するための
ワークショップ
◇ 専門家:
津田正之先生(国立音楽大学教授)
井上和夫先生(CMG/Music Director)
◇ 開催日:2019年10月9日~11日
◇ 目的:
ナショナルトレーナー育成研修に必要とされる一般的な内容を理解するとともに、
カンボジアの音楽教育において特に大切だと考えられる内容について協議するため。
また、ナショナルトレーナー候補となる人材の現時点での音楽的な技能の確認視察。
ワークショップ及び視察の様子
3)パイロット事業対象地域およびナショナルトレーナー候補の選定
ワーキンググループメンバーと協議を行い、パイロット事業の対象州及び、
ナショナルトレーナー候補となる人材の選定・キックオフミーティングを実施しました。
キックオフミーティングの様子
◇ 選定理由:
プノンペン市の近郊州の中でも特に教育に力を入れている州。これまでの日本の支援との関係性が深いため。
◇ ナショナルトレーナー候補:
プノンペン教員養成大学の芸術教科の教員に決定。
◇ 選定理由:
初等科教育課程と教員養成課程の連携を深めることにより、将来の効果的な芸術教科の普及に繋がることを期待。
[7] 2019年11月以降~2020年3月
ナショナルトレーナー候補による教員研修
1)授業実践・教科書、指導書作成作業の実施
製本に向けて、デザイン会社でのページデザインを開始しました。
教科書サンプル
2)パイロット事業の開始
対象校での事前モニタリング、ナショナルトレーナー育成研修を行いました。
(1)対象校での事前モニタリング
タケオ州の対象校4校を訪問し、パイロット事業実施前の学校環境や教員の指導状況を把握するための事前モニタリングを行いました。学校長・対象教員へのインタビュー及び各科目の授業観察も実施しました。
対象校での事前モニタリングでの授業の様子(授業観察・音楽)
(2)ナショナルトレーナー育成研修
・第1回音楽教育研修(音楽技能/井上和夫先生):2019年12月26日~27日
・第2回音楽教育研修(音楽教育概論・指導法/津田正之先生):2020年1月6日~11日
・第1回美術教育研修(美術教育概論/藤江充先生):2020年1月20日~23日
・第2回美術教育研修(美術教育指導法/辻政博先生):2020年2月10日~15日
第1回音楽教育研修の様子(写真右:音楽技能/井上和夫先生 , 写真左:美術教育概論/藤江充先生)
3)ナショナルトレーナー候補によるタケオ州での教員研修
日本人専門家より研修を受けたナショナルトレーナー候補が、
自分たちが研修で学んだことを基にプログラムを作成し、
タケオ州の対象校教員24名への教員研修を実施しました。
(1)第1回音楽教員研修:2020年3月9日~13日
(2)第1回美術教員研修:コロナウイルスの感染予防対策のため、延期。
音楽教員研修の様子
[8] 2020年4月~2020年10月
コロナ感染拡大により、カンボジアでは、
学校休校や研修・会議の人数にも制限が出ていたため、
この間は、オンラインや少人数での作業を進めました。
オンラインツールを活用した教科書・指導書作成作業
教育省ワーキンググループやデザイン会社との教科書・指導書作成作業や会議を
オンラインや少人数体制で進めました。
また、教科書・指導書のドラフトが完成した学年から順に、印刷会社へデータを入稿し、製本できる状態の冊子データ作成を同時に進めています。
[9] 2020年11月~2021年4月
コロナで中断されていたパイロット事業の再開
カンボジア国内のコロナ感染拡大の影響で、学校の閉鎖や自粛要請措置が繰り返されたため、国内の状況に合わせて、オンラインを中心に活動を切り替えて事業を進めています。
2月~の学校再開に伴い、中断されていたパイロット事業が再開しました。
1)教科書・指導書作成作業・授業実践の実施
日本・カンボジアの両国でオンライン等でのやり取りをしながら、音楽・美術科目の教科書・指導書作成のための会議や授業実践、作業を継続して行いました。
1~3学年の教科書・指導書は、美術/音楽科目共に印刷会社によるレイアウトやワーキンググループとの校正作業が進み、完成形が見えてきました。
授業実践の様子
2)中断されていたパイロット事業の再開
(1)ナショナルトレーナーによるタケオ州での美術科教員研修の再開
2020年に3月、タケオ州にて実施予定だった美術科目の教員研修は、
コロナの影響を受け中断・延期されていましたが、
学校が再開した2月に再実施することができました。
左写真)「仮面劇」の鑑賞の授業体験
中央写真)石を使った造形あそびの授業体験
右写真)研修前の感染予防対策の実施
◇実施日(美術科目1~3年):2021年2月1~4日
◇講師:ナショナルトレーナー候補(プノンペン教員養成大学の美術科教師5名)
◇対象者:計19名
タケオ州2郡の小学校4校の1年生から3年生までの担当教員1名ずつ
各校の学校長、対象郡教育局職員2名、州教育局職員1名
(2)対象校でのトライアル授業の実施
研修を受けた12名の先生方は、自分の学校へ戻り、
寄贈された材料・用具、衛生資材、新しい1~3年生の教科書・指導書を用いて
自分のクラスの生徒たちへの美術のトライアル授業を開始しました。
左写真)トライアル授業で友達の作品を鑑賞する生徒
右写真)トライアル授業用の材料用具の寄贈
このトライアル授業から得られるフィードバックは、教科書・指導書の改訂に
使用されます。
トライアル授業が終了する前に、コロナ感染拡大により、学校が再度閉鎖となってしまったため、残りの活動は学校の再開後へと延期されました。
[10] 2021年5月~2021年10月
授業実践・報告会の実施
カンボジア国内の再度の学校閉鎖に伴い、事業は引き続き、オンライン中心に進めています。
1)教科書・指導書作成・修正のためのオンライン会議
◇実施日:毎週木曜日と金曜日
2021年6月6日(日本人専門家)
◇参加者:教育省の関係3局の担当行政官、日本人専門家など
カンボジア教育省と構成している芸術教科のワーキンググループや日本人専門家とのオンライン会議を実施し、教科書・指導書の作成及び修正を行いました。
オンライン会議の様子
2)オンライン授業実践
◇実施回数:11回(ビデオ授業含む)
コロナ禍で公立小学校の閉校が続き、教科書・指導書作成のための対面の授業実践ができない状況が続いています。
そのため、今期は児童養護施設(CCH)の子どもたちに協力してもらい、授業ビデオの作成やオンライン授業へ切り替えて進めました。
オフラインでの授業実践の様子
3)オンライン勉強会
◇実施日:2021年7月2日
カンボジア国内で幼児教育事業を実施する他の日系NGOとの相互学習を目的として実施された、現地スタッフによる事業発表や体験授業を取り入れたオンライン勉強会に参加しました。
4)オンライン報告会
◇実施日:2021年8月25日
◇参加者:教育総局の副局長、関係3局の上長や教員養成大学の
芸術科教員等の総勢18名
カンボジア教育省と共に、事業の進捗についての報告会をズームにて行いました。
教育総局の副局長Mok Sarom氏の挨拶の様子
[11] 2021年11月~2022年2月末
JHPがイニシアチブを取り、JICA・カンボジア教育省とともに三者協同で進めてきた本事業は、2016年8月の開始から、5年半が経ち、今年2022年2月末に事業完了を迎えました。
1)授業実践の再開
◇授業実践数:10題材
新型コロナウイルス感染状況が落ち着きを見せ始めたことから、2021年11月、
カンボジア教育省は長らく閉校していたすべての小学校を開校しました。
これに伴い、オンラインで進めてきた授業実践を対面に戻すことが可能となりました。
写真)楽しみながら授業に参加してくれた生徒たち
マスクや人数制限などの予防措置は必要なものの、久しぶりとなった対面での授業実践に、子どもたちも楽しく取り組んでくれました。
2)フォローアップ研修の実施
2021年11月から2022年2月中旬まで、ナショナルトレーナー候補へのフォローアップ研修を週に一回ずつの形で行いました。
◇実施回数:11回
研修は、コロナの状況を考慮して、11、12月はオンラインで、それ以降は対面で実施しました。対面の研修は、全員が先生役、児童役を交代しながら、様々な授業を体験する模擬授業を中心に行われました。
写真)先生を指導する「ナショナルトレーナー候補」による模擬授業の様子
先生と児童の両方の立場から授業の内容や指導方法について考え、お互いの気付きやアドバイスを共有することで、授業内容や指導方法の改善へと繋げていきます。
3)オンライン会議の実施
カンボジア教育省の芸術教科ワーキンググループ(WG)とのオンライン会議を実施しました。
◇会議回数:18回
教科書、指導書の完成に向けて、題材内容の検討や協議、修正を行いました。
4)生徒用教科書及び教師用指導書の第1版が完成
5年半の事業活動の成果として、初等科芸術教科1年生から6年生までの生徒用教科書及び教師用指導書の第1版が完成しました。
左/中央写真)初等科芸術教科の生徒用教科書(第1版)
右写真)初等科芸術教科の教師用指導書(第1版)
5)事業完了報告会の実施
事業の最後の活動として、2月23日に教育省との最終報告会を行いました。
JHPは事業の代表者として、事業開始から完了までの経緯とその成果を報告し、
完成した第1版の芸術教科の教科書・指導書の印刷サンプルとデータを教育省へ提出しました。
報告会には多くの事業関係者が集まり、
ワーキンググループメンバーやナショナルトレーナーへは、プログラムの完了証明書、関係者へは感謝状が教育省から授与されました。
その後、3月23日には、日本国内の関係者および一般の方々へ向けた、
オンラインでの完了報告会がJICA東京センター主催で行われました。
左写真)最終報告会にて完了証明書の授与
右写真)最終報告会での記念写真
カンボジアの小学校の芸術教科(音楽/美術)にふさわしいカリキュラム作り、
教科書/指導書作り、人材育成を目指して、2016年から5年半に渡って進めてきた
この事業は、途中コロナ禍で試行錯誤しながらも、スタッフが一丸となって取組み、
カンボジアの教育の未来を変える大きな1歩を踏み出しました。
日本の協力で、カンボジアの今後の子どもたちの芸術教育が変わろうとしています。